メルクリウス総合行政書士事務所
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ちょっと冷静になってみました(「登録」って何?)
たとえば、倉庫業登録申請に関して。
倉庫業法28条には「次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とあり、
無登録での営業者は、同条1号「第3条の規定に違反して倉庫業を営んだ者」に該当します。
この罰則を適用する際、
法定されている最も重い刑を処断されて「1年の懲役に処する」との判断を下されたとすると、
この営業者が新規登録申請を行おうとする場合、
倉庫業法6条1項1号「申請者が1年以上の懲役・・・に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者であるとき」に該当し、
「国土交通大臣は・・・・その登録を拒否しなければならない。」ということになります。
無許可での営業→それに対する罰則適用の有無等の判断は、その者が行う登録申請に先行すると考えるのが素直ですので、条文の適用関係としては、このような構造だと理解しておいて大過ないかと思われます。
このような理解を前提に、すこし言い換えると、
無許可での営業者が新規登録する場合、そのことが理由で登録拒否されるとすれば、
それは 申請前までの無登録状態での営業について「1年以上の懲役」に相当すると判断された場合(≒それほど悪質だと判断された場合)だけである、
ということになります。
なお、付け足しておくと、登録拒否事由に該当した場合、国土交通大臣は「その登録を拒否しなければならない」(倉庫業法6条柱書)とあり、登録拒否に関する裁量判断は条文上排除されています。
これと対応して(対称的に、というと却ってややこしいでしょうか?)、
倉庫業法5条は、
「国土交通大臣は、前条(倉庫業法4条)の規定による登録の申請があった場合においては、次条(同法6条)1項の規定により登録を拒否する場合を除くほか、次に掲げる事項を倉庫業者登録簿に登録しなければならない。」と規定し、
適式な申請については、登録拒否事由がある場合を除いて、登録に関しての裁量判断の余地を認めていません。
要するに、倉庫業登録申請に対しては、国土交通大臣は、登録についても登録拒否についても、裁量判断の余地がないと規定されている、ということです。
これはつまり、倉庫業登録が、「公証」という行政行為の性質を有しているという理解につながります。
こうやって整理してくると、
倉庫業法の場合は、国土交通大臣が無登録の営業者について必ず登録拒否すべきだと考えているとは言えません。
が、同時に、無登録営業を行っていた者についても 一切登録拒否の余地がないような法構造にしておくのも、倉庫業法の目的(同法1条)の実現に照らして妥当とは言えないでしょう。
そのバランスをとる機能(一般的に登録拒否事由にはせず、悪質な場合のみを裁量的に拒否する、という構造を実現するための機能)を果たしているのが、
同法28条1号の罰則規定である、ということができるのではないか、と思います。
(現時点では。)
実際1つ申請をやってみると、こんな程度のことは直ぐに解決するのかもしれませんが、理論的な整理をしておくことにも意味はあるでしょう。 価値を持つのはいつのことやら分かりませんが。
せっかくなのでもう少し。
旅館営業の許可申請(旅館業法3条1項)について。
まず、裁量の有無。
これについては、同法3条2項柱書に「都道府県知事は、・・・・許可を与えないことができる」として、明文で旅館営業等の許可申請についての不許可処分の権限とそのための裁量を認めています。
次に、無許可営業と罰則について見てみると、
旅館業法10条「左の各号の一に該当するものは、これを6月以下の懲役または3万円以下の罰気に処する」とし、
同条1号で「第3条第1項の規定に違反して同条同行の規定による許可を受けないで旅館業を経営した者」をあげています。 つまり、営業許可を得ずに旅館業(第2条参照)を経営すると、罰則の適用がありますよ、ということで、これは倉庫業登録の場合と似ています。
倉庫業における登録拒否事由とクッキリちがっているのは、不許可事由の内容です。
倉庫業法3条2項は、「許可を与えないことができる」場合として、以下のようなものをあげています。
① 「申請にかかる施設の構造設備が政令で定める基準に適合しない(と認められるとき)」
② 「当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当である(と認めるとき)」
③ 「申請者が次の各号の一に該当するとき」
とし、さらに、法3条1項1号として、「この法律またはこの法律に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることが亡くなった日から起算して3年を経過していない者」としています。
つまり、「この法律(倉庫業法3条1項1号)に違反して(無許可で営業して)」しまうと、不許可にする処分が裁量判断の権限とともに行政庁(旅館業の場合は「都道府県知事」)に与えられている、ということです。
これによれば、許可制であっても、登録制の場合と同様に、
無許可の営業は、直接的に不許可事由や、登録拒否事由に該当することはなく、
媒介として、罰則違反が機能しているということがいえると思います。
両者の相違は、倉庫業登録の場合には、「この法律又はこの法律に基づく処分に違反して」のように、「刑に処せられた」際の根拠法令について明文で規定されていないということと、
免責されるまでの期間が 旅館業許可に比べてやや短いということでしょうか。
要するに、倉庫業登録と旅館業許可では、
旅館業の方が倉庫業よりも、行政庁による管理・監督の必要性が類型的に高いというのが立法判断としてあり、
ⅰ. 不利益処分あるいは利益処分(登録・登録拒否、許可・不許可処分)についての裁量判断の余地の有無
ⅱ. そこから不利益処分の事由の内容として明文上も業法違反事例を規定しているか否か
ⅲ. 拒否事由・不許可事由に該当する時的範囲の広狭
などの違いが設けられている、と考えられます。
まぁ、別に直接この2つの業種を比較しながら法律作った訳はありませんので、そのように解釈することができる、というだけのことであるのは勿論です。
さて、そのあたりまで考えてくると、
昨日ちらっとだけ書いた(?)、「許可制から登録制へ」という広報がなされているような営業に関しては、あえて登録制にしたと表明している以上、申請に対する拒否については、許可とは対照的な裁量の狭さが意識的に選択されている(「公証」に近づけて制度設計されている)、と見ることができますし、
併せて、あえて拒否事由に該当する場面を狭く設定している・・・・一般的に無登録営業について登録拒否を想定しているというよりは、
むしろ、無登録の営業については、行政庁の裁量によって よほど悪質な場合のみを規制し(→「1年の懲役」→登録拒否事由該当裁量の余地のない拒否)、
それ以外の無登録の営業一般については、登録拒否事由に該当しないとすることを意識的に選択して、想定していると考えることができます。
その方が、各々の法の目的を実質的に実現することができる、という判断である点では共通しますが、規制の範囲や強弱が異なっているということですね(あたりまえか)。
という訳で、一応この「無許可・無登録による営業に対する罰則と登録拒否事由」の関係については、なんとなく落ち着いてきました。
すこしはっきりしないのは、さきほど私は、
裁量の広狭の選択が意識的に行われていて、「併せて」、無許可・無登録営業の許可・登録からの排除の範囲の広狭についての判断も意識的に行われている、と言う趣旨のことを書きましたが、
その「併せて」というのが、どの程度のものなのか、どんな内容のものなのか、ということについては、
やや考えずに書きましたので、
いずれそのあたり、はっきりさせる機会があれば書いてみたいと思います。
「登録」って何?
「登録」の性質(いかなる行政行為にあたるかという点)について、
今日はすこし考えました。
以下に誤解などあれば、是非ともご指摘ください。
まったくの的外れの場合には、できれば具体的にご教示いただけると今後の参考にもなってとてもありがたいのですが・・・・そんな虫のいい話は措いといて。
要は、公証か許可か(登録拒否についての裁量があるかないか)という話が入口になろうかと思います。
リーディング・ケースはたぶん「ストロングライフ事件」(最判昭和56.2.26)。
毒物劇物輸入業登録申請に関して、明文上の登録拒否事由がない場合、
毒物劇物の用途によっては人体に危害を及ぼすおそれがあることを理由になされた登録拒否処分についての判例です。
判例の結論としては、毒物劇物輸入業に対する規制は「設備面」についてのものであって、直接の規制対象でない毒物劇物の「用途」を理由とする登録拒否については、
厚生大臣(当時)の裁量判断の余地がない・・・つまり、用途を理由とする登録拒否はできない、というものです。
実質的な判断基準としては、
「具体的事情を基礎に、比較衡量的判断を含む合理的行政裁量を行使することが許容される余地があるか否か」という観点から、
各条文上の文言を実質的に解釈して確定する、という理解でよさそうに思うのですが、
この理解を前提にすると、
結局のところ行政庁の公開した処分基準や運用がこの判断基準に合致するか否かで「登録拒否裁量の有無(許可か否か)」を判断する、ということになってくると思います。
前置きが長くて何なんですが、
そうだとすると解らなくなってくる(あるいは、解ったことにしてよいかどうか判らない)のが、
「許可から登録に変わりました」という広報がなされている場合、
その場合の「登録」とは、原則として公証で、登録拒否事由としてあげられている事由については裁量判断が可能であるという理解でよいのかどうか、という小さな確認事項がひとつ。
さらに、例外的に裁量判断の余地があるか否かや、その広狭には、
登録拒否事由に該当する場合と、罰則の対象となる無許可登録の場合とで、どのような違いがあるかということがわかりません。
これがようやくたどり着いた本日の焦点です。
すごく分かりにくい感じなのでやや敷衍しますと、
無許可から、「このたび登録することにいたしました」という場合に、
「無登録で営業していたこと」という趣旨の登録拒否事由がないとき、
まず、登録は拒否されるのか?
つぎに、拒否されないとして、たとえば違反行為が発覚したとして罰則を科すような、何らかのペナルティがあるのか?
さらに、そのようなペナルティがあるか否かについて、
第1に「行政法上の裁量権を行政庁が有するか」、ということ、
そこで裁量があるとすると、
第2に「実際上どのような運用がなされているか」ということ
を2段階で確かめたくなってきます。
書いてるうちに、自分の理解できていないことが段々とわかってきましたが、
行政罰の位置づけや構造が分かっていない、ということが一つありますね。
が、これは後日の課題として、今はとりあえずわかっていることを整理しておきます。
まずひとつには、どの登録制度であるかはもちろん、具体的な申請内容によって変わってくることですので、ひと口に論ずるのは大雑把過ぎるということは当然です。
もうひとつは、ある処分についての裁量が認められる場合、その処分よりも弱い処分については当然に裁量が認められるであろうという解釈手法(いわゆる「勿論解釈」)がありますが、
この場合、「登録拒否処分」と「罰則の適用」とは、そのように単純な強弱の比較が妥当なものかということがあります。
これはほっとけないので、考えましょう。(でもちょっと寝てからね。)
もうひとつメモしておきたいのは、いまのところの観測。
おそらく、無許可状態だった営業主(たとえば白タクとか)が登録申請をした場合、登録拒否事由に該当しない以上、拒否処分を下すか否かを判断する裁量を有しないが、罰則の適用は別個に判断されるのではないかと思います。
ここで(希望的観測の)ポイントにしたいのは、
登録拒否処分とは「別個に」罰則が適用されるという点ではなくて、
罰則を適用するか否か、またその内容を具体的にどうするか(要するに「法定刑」に対する「処断刑」にあたるもの)についての判断を行う「裁量」が行政庁に与えられている、
という点です。
しつこいけど敢えて繰り返しておくと、罰則を適用しなくても構わない、というところがポイント。
そして、その、「罰則を適用するか否か」の裁量とは、
先ほど書いたように、「具体的事情を基礎に(行使される)、比較衡量的判断を含む合理的行政裁量」
であるはずです。
であれば、これまで無登録・無許可でやってた営業を、あらためて登録し、許可を得ようとしてやってきたのに、
その業者を突っぱねるようなことをすれば実際上の委縮効果をもたらし、
結果として登録制度による目的を十分に達成できないという事態を生むことになる・・・・というような考え方をしてくれれば、
罰則を適用しない、という判断もそれなりの合理性があるということになってくるんではないか、
と思います。 例によって引き込み過ぎでしょうか。
私はまだ扱ったことがありませんが、先輩の行政書士の先生によれば、実際に、タクシー業に関してはそのような取扱いがなされているようです。
・・・・まぁ、ホントに現時点での話になると、別の(社会経済的な)事情から、新規参入に対する規制障壁は、事実上は相当高くなっているらしいですが。
ともかく、すくなくとも理屈としては成り立ちうると思うので、実際上の運用がどのような感じであるのかを確かめる必要はある、ということになりそうです。
あ、そうそう。 あともうひとつ、結論にどの程度影響があるかまだ分かりませんが、ひっかかることが。
「公証」に該当する登録制度として、行政書士登録があげられることが多いのですが、
行政書士登録をせずに行った独占業務該当行為は、非行政書士行為として原則的に罰則の対象になります(行政書士法21条等参照)。
たとえば、非行政書士行為を継続的に行ってきた者が、「今般 行政書士登録をいたします」、として申請してきた場合、
それが業務に該当する(それゆえ「非行政書士行為」に該当しうる)行為を行っていたものであることが判明したとき、
罰則の適用の有無や程度は裁量判断であるとしても、実際上、かかるものをノン・ペナルティのまま登録してしまうかどうかというのは、やや疑義を差し挟みたいような気がします。
その場合、たとえば、報酬を得ていないなどの事情があり、客観的に「行政書士業務」に当たらない行為であることが判明した場合は、
文句なく罰則の適用はないでしょう(そんなことが現実にどの程度ある事象なのか今は知りませんが)・・・・この件、今日のところは余談ということにしておいて。
すこし寝て、考えがまとまってきたら、また書きましょう。
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