メルクリウス総合行政書士事務所
東京都品川区西五反田2丁目24番7-802号 / TEL:03-3492-1797 / 許認可等申請、外国人の起業・就労・雇用、事業承継・第二創業・組織再編
ちょっと冷静になってみました(「登録」って何?)
無登録の営業に対する罰則と登録拒否事由の話。
たとえば、倉庫業登録申請に関して。
倉庫業法28条には「次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とあり、
無登録での営業者は、同条1号「第3条の規定に違反して倉庫業を営んだ者」に該当します。
この罰則を適用する際、
法定されている最も重い刑を処断されて「1年の懲役に処する」との判断を下されたとすると、
この営業者が新規登録申請を行おうとする場合、
倉庫業法6条1項1号「申請者が1年以上の懲役・・・に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者であるとき」に該当し、
「国土交通大臣は・・・・その登録を拒否しなければならない。」ということになります。
無許可での営業→それに対する罰則適用の有無等の判断は、その者が行う登録申請に先行すると考えるのが素直ですので、条文の適用関係としては、このような構造だと理解しておいて大過ないかと思われます。
このような理解を前提に、すこし言い換えると、
無許可での営業者が新規登録する場合、そのことが理由で登録拒否されるとすれば、
それは 申請前までの無登録状態での営業について「1年以上の懲役」に相当すると判断された場合(≒それほど悪質だと判断された場合)だけである、
ということになります。
なお、付け足しておくと、登録拒否事由に該当した場合、国土交通大臣は「その登録を拒否しなければならない」(倉庫業法6条柱書)とあり、登録拒否に関する裁量判断は条文上排除されています。
これと対応して(対称的に、というと却ってややこしいでしょうか?)、
倉庫業法5条は、
「国土交通大臣は、前条(倉庫業法4条)の規定による登録の申請があった場合においては、次条(同法6条)1項の規定により登録を拒否する場合を除くほか、次に掲げる事項を倉庫業者登録簿に登録しなければならない。」と規定し、
適式な申請については、登録拒否事由がある場合を除いて、登録に関しての裁量判断の余地を認めていません。
要するに、倉庫業登録申請に対しては、国土交通大臣は、登録についても登録拒否についても、裁量判断の余地がないと規定されている、ということです。
これはつまり、倉庫業登録が、「公証」という行政行為の性質を有しているという理解につながります。
こうやって整理してくると、
倉庫業法の場合は、国土交通大臣が無登録の営業者について必ず登録拒否すべきだと考えているとは言えません。
が、同時に、無登録営業を行っていた者についても 一切登録拒否の余地がないような法構造にしておくのも、倉庫業法の目的(同法1条)の実現に照らして妥当とは言えないでしょう。
そのバランスをとる機能(一般的に登録拒否事由にはせず、悪質な場合のみを裁量的に拒否する、という構造を実現するための機能)を果たしているのが、
同法28条1号の罰則規定である、ということができるのではないか、と思います。
(現時点では。)
実際1つ申請をやってみると、こんな程度のことは直ぐに解決するのかもしれませんが、理論的な整理をしておくことにも意味はあるでしょう。 価値を持つのはいつのことやら分かりませんが。
せっかくなのでもう少し。
旅館営業の許可申請(旅館業法3条1項)について。
まず、裁量の有無。
これについては、同法3条2項柱書に「都道府県知事は、・・・・許可を与えないことができる」として、明文で旅館営業等の許可申請についての不許可処分の権限とそのための裁量を認めています。
次に、無許可営業と罰則について見てみると、
旅館業法10条「左の各号の一に該当するものは、これを6月以下の懲役または3万円以下の罰気に処する」とし、
同条1号で「第3条第1項の規定に違反して同条同行の規定による許可を受けないで旅館業を経営した者」をあげています。 つまり、営業許可を得ずに旅館業(第2条参照)を経営すると、罰則の適用がありますよ、ということで、これは倉庫業登録の場合と似ています。
倉庫業における登録拒否事由とクッキリちがっているのは、不許可事由の内容です。
倉庫業法3条2項は、「許可を与えないことができる」場合として、以下のようなものをあげています。
① 「申請にかかる施設の構造設備が政令で定める基準に適合しない(と認められるとき)」
② 「当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当である(と認めるとき)」
③ 「申請者が次の各号の一に該当するとき」
とし、さらに、法3条1項1号として、「この法律またはこの法律に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることが亡くなった日から起算して3年を経過していない者」としています。
つまり、「この法律(倉庫業法3条1項1号)に違反して(無許可で営業して)」しまうと、不許可にする処分が裁量判断の権限とともに行政庁(旅館業の場合は「都道府県知事」)に与えられている、ということです。
これによれば、許可制であっても、登録制の場合と同様に、
無許可の営業は、直接的に不許可事由や、登録拒否事由に該当することはなく、
媒介として、罰則違反が機能しているということがいえると思います。
両者の相違は、倉庫業登録の場合には、「この法律又はこの法律に基づく処分に違反して」のように、「刑に処せられた」際の根拠法令について明文で規定されていないということと、
免責されるまでの期間が 旅館業許可に比べてやや短いということでしょうか。
要するに、倉庫業登録と旅館業許可では、
旅館業の方が倉庫業よりも、行政庁による管理・監督の必要性が類型的に高いというのが立法判断としてあり、
ⅰ. 不利益処分あるいは利益処分(登録・登録拒否、許可・不許可処分)についての裁量判断の余地の有無
ⅱ. そこから不利益処分の事由の内容として明文上も業法違反事例を規定しているか否か
ⅲ. 拒否事由・不許可事由に該当する時的範囲の広狭
などの違いが設けられている、と考えられます。
まぁ、別に直接この2つの業種を比較しながら法律作った訳はありませんので、そのように解釈することができる、というだけのことであるのは勿論です。
さて、そのあたりまで考えてくると、
昨日ちらっとだけ書いた(?)、「許可制から登録制へ」という広報がなされているような営業に関しては、あえて登録制にしたと表明している以上、申請に対する拒否については、許可とは対照的な裁量の狭さが意識的に選択されている(「公証」に近づけて制度設計されている)、と見ることができますし、
併せて、あえて拒否事由に該当する場面を狭く設定している・・・・一般的に無登録営業について登録拒否を想定しているというよりは、
むしろ、無登録の営業については、行政庁の裁量によって よほど悪質な場合のみを規制し(→「1年の懲役」→登録拒否事由該当裁量の余地のない拒否)、
それ以外の無登録の営業一般については、登録拒否事由に該当しないとすることを意識的に選択して、想定していると考えることができます。
その方が、各々の法の目的を実質的に実現することができる、という判断である点では共通しますが、規制の範囲や強弱が異なっているということですね(あたりまえか)。
という訳で、一応この「無許可・無登録による営業に対する罰則と登録拒否事由」の関係については、なんとなく落ち着いてきました。
すこしはっきりしないのは、さきほど私は、
裁量の広狭の選択が意識的に行われていて、「併せて」、無許可・無登録営業の許可・登録からの排除の範囲の広狭についての判断も意識的に行われている、と言う趣旨のことを書きましたが、
その「併せて」というのが、どの程度のものなのか、どんな内容のものなのか、ということについては、
やや考えずに書きましたので、
いずれそのあたり、はっきりさせる機会があれば書いてみたいと思います。
たとえば、倉庫業登録申請に関して。
倉庫業法28条には「次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とあり、
無登録での営業者は、同条1号「第3条の規定に違反して倉庫業を営んだ者」に該当します。
この罰則を適用する際、
法定されている最も重い刑を処断されて「1年の懲役に処する」との判断を下されたとすると、
この営業者が新規登録申請を行おうとする場合、
倉庫業法6条1項1号「申請者が1年以上の懲役・・・に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者であるとき」に該当し、
「国土交通大臣は・・・・その登録を拒否しなければならない。」ということになります。
無許可での営業→それに対する罰則適用の有無等の判断は、その者が行う登録申請に先行すると考えるのが素直ですので、条文の適用関係としては、このような構造だと理解しておいて大過ないかと思われます。
このような理解を前提に、すこし言い換えると、
無許可での営業者が新規登録する場合、そのことが理由で登録拒否されるとすれば、
それは 申請前までの無登録状態での営業について「1年以上の懲役」に相当すると判断された場合(≒それほど悪質だと判断された場合)だけである、
ということになります。
なお、付け足しておくと、登録拒否事由に該当した場合、国土交通大臣は「その登録を拒否しなければならない」(倉庫業法6条柱書)とあり、登録拒否に関する裁量判断は条文上排除されています。
これと対応して(対称的に、というと却ってややこしいでしょうか?)、
倉庫業法5条は、
「国土交通大臣は、前条(倉庫業法4条)の規定による登録の申請があった場合においては、次条(同法6条)1項の規定により登録を拒否する場合を除くほか、次に掲げる事項を倉庫業者登録簿に登録しなければならない。」と規定し、
適式な申請については、登録拒否事由がある場合を除いて、登録に関しての裁量判断の余地を認めていません。
要するに、倉庫業登録申請に対しては、国土交通大臣は、登録についても登録拒否についても、裁量判断の余地がないと規定されている、ということです。
これはつまり、倉庫業登録が、「公証」という行政行為の性質を有しているという理解につながります。
こうやって整理してくると、
倉庫業法の場合は、国土交通大臣が無登録の営業者について必ず登録拒否すべきだと考えているとは言えません。
が、同時に、無登録営業を行っていた者についても 一切登録拒否の余地がないような法構造にしておくのも、倉庫業法の目的(同法1条)の実現に照らして妥当とは言えないでしょう。
そのバランスをとる機能(一般的に登録拒否事由にはせず、悪質な場合のみを裁量的に拒否する、という構造を実現するための機能)を果たしているのが、
同法28条1号の罰則規定である、ということができるのではないか、と思います。
(現時点では。)
実際1つ申請をやってみると、こんな程度のことは直ぐに解決するのかもしれませんが、理論的な整理をしておくことにも意味はあるでしょう。 価値を持つのはいつのことやら分かりませんが。
せっかくなのでもう少し。
旅館営業の許可申請(旅館業法3条1項)について。
まず、裁量の有無。
これについては、同法3条2項柱書に「都道府県知事は、・・・・許可を与えないことができる」として、明文で旅館営業等の許可申請についての不許可処分の権限とそのための裁量を認めています。
次に、無許可営業と罰則について見てみると、
旅館業法10条「左の各号の一に該当するものは、これを6月以下の懲役または3万円以下の罰気に処する」とし、
同条1号で「第3条第1項の規定に違反して同条同行の規定による許可を受けないで旅館業を経営した者」をあげています。 つまり、営業許可を得ずに旅館業(第2条参照)を経営すると、罰則の適用がありますよ、ということで、これは倉庫業登録の場合と似ています。
倉庫業における登録拒否事由とクッキリちがっているのは、不許可事由の内容です。
倉庫業法3条2項は、「許可を与えないことができる」場合として、以下のようなものをあげています。
① 「申請にかかる施設の構造設備が政令で定める基準に適合しない(と認められるとき)」
② 「当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当である(と認めるとき)」
③ 「申請者が次の各号の一に該当するとき」
とし、さらに、法3条1項1号として、「この法律またはこの法律に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることが亡くなった日から起算して3年を経過していない者」としています。
つまり、「この法律(倉庫業法3条1項1号)に違反して(無許可で営業して)」しまうと、不許可にする処分が裁量判断の権限とともに行政庁(旅館業の場合は「都道府県知事」)に与えられている、ということです。
これによれば、許可制であっても、登録制の場合と同様に、
無許可の営業は、直接的に不許可事由や、登録拒否事由に該当することはなく、
媒介として、罰則違反が機能しているということがいえると思います。
両者の相違は、倉庫業登録の場合には、「この法律又はこの法律に基づく処分に違反して」のように、「刑に処せられた」際の根拠法令について明文で規定されていないということと、
免責されるまでの期間が 旅館業許可に比べてやや短いということでしょうか。
要するに、倉庫業登録と旅館業許可では、
旅館業の方が倉庫業よりも、行政庁による管理・監督の必要性が類型的に高いというのが立法判断としてあり、
ⅰ. 不利益処分あるいは利益処分(登録・登録拒否、許可・不許可処分)についての裁量判断の余地の有無
ⅱ. そこから不利益処分の事由の内容として明文上も業法違反事例を規定しているか否か
ⅲ. 拒否事由・不許可事由に該当する時的範囲の広狭
などの違いが設けられている、と考えられます。
まぁ、別に直接この2つの業種を比較しながら法律作った訳はありませんので、そのように解釈することができる、というだけのことであるのは勿論です。
さて、そのあたりまで考えてくると、
昨日ちらっとだけ書いた(?)、「許可制から登録制へ」という広報がなされているような営業に関しては、あえて登録制にしたと表明している以上、申請に対する拒否については、許可とは対照的な裁量の狭さが意識的に選択されている(「公証」に近づけて制度設計されている)、と見ることができますし、
併せて、あえて拒否事由に該当する場面を狭く設定している・・・・一般的に無登録営業について登録拒否を想定しているというよりは、
むしろ、無登録の営業については、行政庁の裁量によって よほど悪質な場合のみを規制し(→「1年の懲役」→登録拒否事由該当裁量の余地のない拒否)、
それ以外の無登録の営業一般については、登録拒否事由に該当しないとすることを意識的に選択して、想定していると考えることができます。
その方が、各々の法の目的を実質的に実現することができる、という判断である点では共通しますが、規制の範囲や強弱が異なっているということですね(あたりまえか)。
という訳で、一応この「無許可・無登録による営業に対する罰則と登録拒否事由」の関係については、なんとなく落ち着いてきました。
すこしはっきりしないのは、さきほど私は、
裁量の広狭の選択が意識的に行われていて、「併せて」、無許可・無登録営業の許可・登録からの排除の範囲の広狭についての判断も意識的に行われている、と言う趣旨のことを書きましたが、
その「併せて」というのが、どの程度のものなのか、どんな内容のものなのか、ということについては、
やや考えずに書きましたので、
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行政書士 吉尾一朗(第08080022号)
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性別:
男性
職業:
行政書士
趣味:
読書。映画鑑賞。昼寝。
自己紹介:
東京都行政書士会品川支部に所属する五反田の行政書士です(日行連登録番号:0808022号)
1. 許認可等申請・届出事務の相談・代行・代理
2.許認可等行政手続に関する法令遵守
3.医療法人設立・運営管理その他医事関連許認可
4.入国管理局申請取次事務・在留資格手続の管理
5.許認可事業の承継(相続・経営承継・M&A)
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